2012
07.18

第21回 私のお気に入り「伊賀焼のビアマグ」  清水建設㈱ 進藤 卓

 

 このコーナーの執筆依頼を受けた時、私自身の「お気に入り」っていったい何だろうと、ハタと考え込んでしまいました。私のお気に入りだったことって何だろう。

 思えば、小学生低学年の頃は親に絵の教室に通わされ、電車の絵を描いた時には枕木の下の砂利を緻密に描くことを覚え、小遣いを貯めてはプラモデル作りに精を出し、そのうちに鉄道少年になって埼玉の自宅から両親の実家がある秋田までの全駅名を諳んじたり、当時まだ走っていたSLの写真を一生懸命撮り、HOゲージの車両やプロペラ飛行機をバルサ材と紙で作ったりしていました。

 中学生の頃には、軟式テニス部に入って部活動に没頭する一方で、親にねだって買ってもらったラジオ(当時はソニーのスカイセンサーやナショナルのクーガなどが、その高機能とデザインで爆発的な人気を博していました)で短波放送を夜な夜な聞いてはベリーカード(受信確認証として放送局が発行するカード)を集め、技術家庭の授業で習ったインターホンやラジオのプリント基盤をどれだけシンプルに作れるか、基盤図を書いては秋葉原の電気街をうろちょろしていたこともありました。

 高校に入ってからは、弓道部に入って活動はしていたものの、何かに没頭していた記憶をあまり思い出せないのですが、高校の入学祝いのテクニクスのセパレート型ステレオ(懐かしい!)でFMチェックするのが好きで、オーディオ機器にも興味を持っていました(ここまで書けば、自分もそうであったと身に覚えがある方々もおられるのではないでしょうか)。そんなこんなで、何となく弱電(電子工学)関係か工業意匠のほうに進もうかなぁ、などと考えていた三年生の夏休みのある日、自分で描いた絵や線が、世の中に形を持って現れる建築なんかが面白そうかな、などという夢をみてしまったことが、流れ流れて現在広島にお世話になっているひとつのきっかけだったように思います。世界遺産、サッカー観戦、F1マシン、絵画鑑賞、ステンドグラス細工、ふみちゃんのお好み焼き等、いまだにお気に入りなことはミーハー的にたくさんあるのですが、そう言えば・・・

  今からちょうど20年前、名古屋に赴任して2年目の時に、大阪のある商社の物流センターの仕事を担当していました。建設地は三重県上野市(現伊賀市)。既にバブルは崩壊していましたが、建設業はまだ景気が良かった頃で、物流センターの玄関ホールに陶壁画をつくろう、ということになりました。

陶壁画の製作者に選ばれたのが、上野市近郊の阿山町(現伊賀市)丸柱地区一帯にある「伊賀焼」の窯元の中で、天保三年(1832年)から続く長谷(ながたに)製陶の七代目長谷優磁(ゆうじ)氏。それまで私も多少陶芸に興味はあったものの、現場が始まってからは毎週のように窯元に通うようになりました。

 長谷製陶さんは、今でもそうですが、土鍋・土瓶など昔ながらの日用食器を提供する一方で、現代的なデザインの食器や花器を扱っておられました。最初はさほど大きくないギャラリーを見てため息をついては帰ったものでしたが、足しげく通ううちに長谷製陶さんの大きな倉庫を見つけ、価格的にもお手頃なものを探索していると、焼〆のビアマグが目に留まりました。その焼〆の風合い・シンプルな形・シンプルな絵付けをいっぺんに気に入ってしまい、少しづつ絵付けのデザインが異なるものを五客、即座に買い込んでしまいました。焼〆の具合で黒褐色で表面がつるつるしているものから黄土色っぽいものまで、また、まれに窯変しているものもありましたが、私は赤褐色のもので、表面が少々ざらついているものが好みです。

ビールを注ぐと土の細かい孔の効果でビールの泡が非常に細かくクリーミーになり、泡がなかなか消えないので、飲むのが遅い私でもいつまでも気が抜けない新鮮なビールをいただくことが出来ます。今ではちょっとしたお店やネット販売でも良く目にするビアマグですが、当時の私には「掘出し物」を見つけた気分で、ひとりで悦に入っておりました。市中にはいろいろなデザインのものが出回っていますが、やはり当時窯元で見つけたこのデザインのものが私の一番のお気に入りで、単身生活の広島にまで持ってきてしまいました。もっとも、私はそんなにお酒が強いほうではなく、家に帰ってもたまに広島のおいしい日本酒をいただくだけで、あまりビールはいただきませんが・・・

  

        長谷製陶の登り窯            焼き〆のビアマグ

 考えてみれば名古屋周辺は焼き物の産地がたくさんあり、愛知は瀬戸焼・常滑焼、岐阜は美濃焼、滋賀には信楽焼など、その後私は各所の窯元巡りを楽しませていただきました。今となっては、現地を訪れることはなかなか叶いません。車が無いと辿り着きにくい場所ではありますが、もし名古屋から伊勢志摩方面に出向く機会があれば、ご興味のある方はぜひ立ち寄られてみてはいかがでしょうか。現地には珍しい登り窯があり、今では創作料理のお店もできています。

  ちなみに、長谷製陶さんはその後もたいへんご活躍されている模様で、いつの頃からか東京の恵比寿にもお店を構えておられます。今では立派なホームページを立ち上げておられ、そこには様々な商品が並んでいますが、やはり現地に行って自分の目に叶うものを探しだすのがよろしいかと思います。参考にH.P.アドレスを紹介します。  http://www.igamono.co.jp/

2012
07.09

第20回 私のお気に入り「和太鼓の魅力」 大昌工芸㈱ 三好明彦

和太鼓の魅力

                               大昌工芸㈱ 三好明彦

みなさん太鼓の演奏を「体感」したことはありますか?

和太鼓はまさしく「聴く」のではなく「体感」する楽器だと思っています。

心の入った太鼓の演奏を空気の振動が伝わるくらいの距離で体感してみてください。音楽等まったく興味がない方でもきっと心 動かされるはずです。

私の記憶の中で和太鼓との初めての出会いは小学校低学年の頃だったと思います。

母方の実家近くの大きな祭りで大太鼓をたたきながら町内を練り歩き最後に太鼓を神社に奉納して終わる祭りで最後は大太鼓が何台も集まって壮観な光景でした。

その祭りで太鼓打ちはバチを短くもち一心不乱に太鼓をたたきます。こぶしは何度も打面にあたりいずれ指の関節部分が擦り切れて血がにじみ出てきますがセーブするわけでもなく反対に血が飛び散るほど激しく打っていたと思います。神社に集まってくるどの大太鼓も打面中央が赤黒くなっていたのを覚えています。

叔父二人も太鼓打ちでした。いつもやさしく冗談ばかり言って笑わせてくれていた叔父たちでしたがその日だけは二人とも別人でした。拳を赤く染め鬼気迫る迫力で打つ姿を背中から見つめていた自分は多分涙をうかべていたと思います。まだ子供だった為「恐い」と思えましたが今思えば感動したのではないでしょうか。

(最近調べたら呉、阿賀地区の総鎮守 神田神社例大祭 という400年続くお祭りで太鼓祭りとして有名との事)

それから40数年間、和太鼓を間近で聞く機会がまったくありませんでした。

ある日 小学生の息子が学校からチラシを1枚持って帰りました。それが和太鼓教室の案内でした。

町内の夏祭り前に5回ほど太鼓の練習をし、夏祭りのオープニングに発表するという案内です。

太鼓教室に行きたいので送り迎えしてほしいと頼まれ 何気無しにふらりと太鼓教室のある体育館に行ったのです。(もちろんその時は前出の阿賀の祭りの事など忘れていました)

やられました。ガツンと来ました。

練習を始める前に和太鼓とはどんなものか一曲演奏するとの事でした。今までそこにいた 普通のおじちゃん、おばちゃんたちが曲が始まったとたん普通ではなくなったのです。とにかくかっこいい!

次の瞬間 大の大人(私)一名が十数人の小学生といっしょにバチの持ち方を習っているのでした。太鼓教室終了後すぐに入部させていただき5年が過ぎました。(その太鼓教室は「美鈴が丘 鬼城太鼓」という部が指導していて出身者の方にはプロになっている方もいました。現在20名くらいで毎週日曜大人と子供に分かれて練習しています。)

 

                             子供たちの練習風景



美鈴が丘 鬼城太鼓 大人の練習風景  (右が私です)

 さて 普通の方は和太鼓として思い描く太鼓の形は樽の形をした宮太鼓という一種類ぐらいしか思い浮かばないと思いますが実はたくさん種類やたたき方があるのです。

一番メジャーなのが宮太鼓。樽の形をしていて 地面並行において普通にたたく他 横に置いて横打ちの三宅太鼓、地面ぎりぎりに横に置き太鼓をまたにはさみ込む様に座り腹筋しながら打ち込む様な屋台囃子等等。

次に宮太鼓を大きくし平たくしたのが大平太鼓。背より高い位置に設置し頭上でたたく大太鼓としたり、地面平行に置きバットの様なバチでベースをたたきます。

一番小さいのが締太鼓。高い音でリズムを刻み オーケストラの指揮者の様な役目をします。

桶の様に板を何枚か輪にして胴を作り紐で打面を固定しているのが桶太鼓。吊下げ式の台で普通にたたく他 軽くて肩掛け用帯が取付でき、担いで動きながら演奏します。パフォーマンス性が一番高い太鼓です。

 

   宮太鼓        大平太鼓        締太鼓      桶太鼓

   

また太鼓以外にも鳴り物といい演奏を面白くする楽器も併用します。

鳴り物、左より チャンチキ、チャッパ(大)(小)、篠笛

 以上 現在我が部にある太鼓の種類を紹介しましたが 和太鼓には まだまだたくさんの大きさ種類があり各クラブがそれぞれ特徴を生かした演奏をされています。

 和太鼓の一番の魅力 それはただただ たたく事のみだと思います。

他の楽器と違い単純に打つのみなのです。自分のリズムを、想いを、心意気を打つのみなのです。

演奏者の気持ちが太鼓を振動させ、空気に伝わり、聞き手の心を揺さぶる。それが感動になると思っています。

現在 和太鼓のチームは広島にもたくさんあり いろいろなイベントでも演奏されています。もしその様なイベントに出くわした時はぜひ 空気がふるえる最前列で振動を感じてください。太鼓打ちがむちゃくちゃかっこよく見えてくるはずです。(和太鼓は縁起物なので大抵がオープニングです。早起きして来てください)

そうです、和太鼓はただのおっちゃんがヒーローになれる魔法の楽器なのです。

最後にぜんぜん太鼓演奏に出会えない方、 ユーチューブに和太鼓が最高にかっこよい動画がアップされていますのでもしよかったら見ていただけたらと思います。Kodo-Irodori(鼓童 彩)で検索してみてください。自分が今まで出会った曲で最高かつ奇跡のような曲です。きっと和太鼓の魅力がわかっていただけると思います。