(株)大林組広島支店建築設計部  宮崎博之

「私のお気に入り」と言われて、はたと困った。元来私は貧乏性であり、ついついものを捨てきれず永く使ってしまう。永く使うといつの間にか愛着がわいてきて「お気に入り」の仲間入りをしてしまう。ということで数々のお気に入りがあるのだが、いただいたお題が「一番のお気に入り」ではないことを救いにその品々の一端を紹介させていただくことにした。

まず私には生涯続けているお気に入りの「こと」が二つある。アウトドアと音楽である。

アウトドアの世界へは小学校の時の林間学校で箱根の金時山に登り、そこから見た富士山のすばらしさに魅かれて入り込んだ。以降毎週のように山に登り、北は利尻から南は屋久島まで日本全国登りまくった。あげくに奥秩父の小屋の居候にもなり、歩荷(荷揚げ)もやったりしていた。そのアウトドアで知り合ったお気に入りの「もの」たちを紹介すると、ダンロップのテント、コールマンのツーバーナー(グループまたは家族用)、プリムスのバーナー(単独用)、シャルレのピッケル、カディスのフライロッド、そしてランドクルーザー(40、50、30と乗り継ぎ3代目)などなど。どれも何十年も使い続けているお気に入りである。

 

     シャルレのピッケル              カディスのフライロッド



   コールマンのツーバーナー

さすがにピッケルを使うことはもうなくなったがフライロッドは広島にも持ってきている。フライ関連ではフライを巻くためのリーガルのバイスもすばらしい。これも広島にある。フライ自体にもお気に入りがあり、パラシュートフライなるものがそれで、ミヤザキスペシャルとして巻き続けているが、まだ広島で出番がないのが残念である。

 中国地方の山は、20年ほど前に大山、蒜山、氷ノ山に登ったが、広島に着任してからは一人では危ないと女房に止められ、おあずけ状態である。それでも自然に触れたくて毎日の会社の行き帰りに極力歩き、大田川沿いの自然を楽しむようにしている。

もう一つのお気に入りの「音楽」であるが、入り込んだきっかけは良く覚えていない。ただ物心ついて最初に親からもらったクリスマスプレゼントがタイガースの「モナリザの微笑み」だったのは覚えている。中学に入ってからすぐにバンドを結成し、ビートルズ、ディープパープル、レッドツェッペリン、和楽ではサデイスティックミカバンド、頭脳警察などをコピーして演奏していた。現在は会社の同僚と吉田拓郎の曲を演奏するバンドを結成し、ライブハウスやフォークフェスティバル等で活動をしている。担当はドラムである。ドラムは小学校の学芸会で「線路は続くよどこまでも」の小太鼓を担当したのがきっかけである。音楽活動の中で出会ったお気に入りの「もの」は、ラディックのスネアドラムLM402、ジルジャンのシンバル、ヒッコリーのスティックなどである。楽器は非常に面白い。特にドラムは単純な楽器に見えるが、意外に構成部材が多く全てが音に影響する。

 

   ラディックのスネアドラム(全体)       ジルジャンのシンバル



   ヒッコリーのスティック

スネアドラムの素材には大きく分けてメタルとウッドがあり、私が使っているのはメタルで深さが少し深いタイプである。低く、重く、深みのある音を出したいので感覚的にこのスネアドラムを使っている。シンバルもダークなタイプを使っている。

ところで音楽は建築につながるところが実に多い。凍れる音楽とも言われているが、一番似ていると思うのはハーモニーが大事だというところである。それぞれのパート(意匠・構造・設備)、そしてディテールと全体。

それらがピタッと合った時の快感はなにものにも代えられない。特にドラムはチーム全体を包み込み、統一感を出す上で重要な存在であり、意匠設計者に通じるものがある。一方楽器もその素材やディテールそしてデザインなど用と美と強(響)を備えたものであり、使う材料も含めてこれもまた建築に近い存在である。音楽については広島に来てからも活動をしており、秋には芝の増上寺のステージに出演するのでお時間があれば聞きに来てくださればありがたい。もちろん曲目は吉田拓郎の曲である。吉田拓郎と言えば広島と縁が深い

が、それほど広島の街中で聞かれないのが残念である。

さて今回紹介させていただいた品々は長年使っている中で「お気に入り」の仲間入りをしたものが多い。今回この文を書かせていただいて感じたことがある。建築も永年使ってもらうことが大事ではないかということである。私は天才ではないので、一目ぼれをしていただけるような建築はなかなかできない。やはり永く使っていただくなかでいい建築だと思ってもらえるのではと。使えば使うほどだんだんと愛着がわき、お施主さんの「お気に入り」に加えてもらえるような建築をこれからも創っていきたいものである。

いろいろ私のお気に入りを書かせていただいたが、それでは「一番のお気に入り」はと聞かれたら、やはり「女房」と答えたい。それでは皆さんお幸せに。